計測系ドローン事業者なら知っておきたい写真撮影ノウハウ 〜解像度管理技術篇〜

計測系ドローン事業者なら知っておきたい写真撮影ノウハウ 〜解像度管理技術篇〜 ノウハウ・コツ
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はじめに

 はじめまして。SkyLink Japanの雨谷(あまがい)です。私は、画像診断や写真測量を目的とした写真撮影技術を得意としておりまして、カメラ技術関連の講習を受け持っております。

 ここでは、表題のテーマの内、最も重要かつ解説の価値がある「解像度管理」について解説したいと思います。

 解像度管理技術は、ドローンを利用した点検・計測分野で広く応用できる技術です。近年のドローン市場拡大の中で、点検・計測分野は、今後最も成長する分野と言われています。解像度管理は、点検・計測業務でドローンを利用する上で基本技術と言え、建築・土木・測量などの業界に事業展開する足がかりとなるはずです。

 未だ解像度管理技術を解説した文献は少なく、写真測量や、赤外線サーモグラフィーカメラの専門的な学習でやっと学べる内容となっていますので、是非この機会に技術の存在だけでも知っていただけたらと思います。

カメラで計測するってどういうこと?

 主に建築・土木・測量分野でカメラを搭載したドローンを活用する目的は、画像診断や三次元化や写真測量などです。これらの撮影を行う際、目的は絵的にイケてる写真を撮影することではなく、ひび割れを発見または幅を測定したり、三次元化してから図面に起こしたり、あるいは距離や体積を測定することが目的となります。よって、この分野では、撮影のことをあえて「計測」といいます。ここでは、計測を目的とした写真撮影のことを「計測撮影」と言います。

 解像度管理技術は、計測系カメラマンだからこそ必要とされるスキルであり、カメラマン業界、ドローン業界、点検・計測業界でも、理論まで解説できる人材が限られている為、習得すれば、クライアントの信頼を獲得できる強力な武器となります。

前提としてのカメラメカニズムの理解

 本来ですと解像度管理技術を学ぶには、カメラのメカニズムや、カメラの仕様についてある程度理解している必要があります。ですが、カメラのメカニズム、ちょっと苦手だなという方が先に解像度管理を理解しても全く問題はありません。今後カメラのメカニズムについても、要望などがあれば、別記事で解説できたらと思っています。

 カメラのメカニズムは理論化されており、メーカーが違っても大枠は変わりません。本やネットでも多くの情報が得られる、という意味では学びやすいのですが、理論が複雑であるため、応用レベルで理解するにはカメラ教室に通ったり、フィールドで実際に撮影しながら理論を定着させ立体的に理解するプロセスが必要です。

 ここからのお話では、カメラメカニズムについては、無知でも大丈夫です。計測撮影においては、細かいカメラメカニズムの理解は必要ではありますが、カメラのオート機能は非常に優れているので最低限の理解で大丈夫です。それよりは、以下に解説する解像度管理が大きなハードルであり、これを超えない限り計測撮影は実施できません。

 カメラメカニズムに興味のある方は、以下のキーワードを調べてみると、全体像が掴めると思います。基礎的な事項ばかりですが、計測撮影では、以下を理解すれば十分と言えると思います。

[キーワード]

  • センササイズの違い(フルサイズとその他)
  • フルサイズ換算(画角目安の計算方法)
  • グローバルシャッターとローリングシャッターの違い
  • 露出設定(絞り、シャッタースピード、ISO値の関係)
  • EV値(AV値、TV値、ISO値との関係)
  • ホワイトバランス
  • 被写界深度(絞り、フォーカス位置(撮影距離)、ピクセルピッチ)
  • 色深度(RAW画像のメリット)と現像
  • 画像形式(jpg、bmp、png、gif、tiffの違いと特性)

何のために解像度を管理するのか

 計測撮影では、常に解像度を管理しなくてはなりません。解像度を管理していない場合、計測の目的である画像診断などを行うための品質・精度を満たしているかどうかが分かりません。解像度は、画像データの品質・精度のエビデンスと言えます。以下を見てください。

 こちらはある現場で写っていた私の写真なのですが。。同じ対象物でも解像度の違いで何が変わるか考えてみてください。

①:人がいるかどうかも分からない状態
②:人がいることがかろうじて分かる(であろう)状態
③:人がいることは明確に分かるが人物までは特定できない状態
④:人物まで特定できる状態

 となります。私を知っている人であれば、④を見て「これは雨谷です」とわかります。
 もし、この画像を撮影した目的が、人の顔を認識して指名手配犯を見つけることだったら、この結果をどう捉えるべきでしょうか。
 ③では人の顔を捉えるのは厳しそうですね。④であれば、特徴は捉えられそうですね。「では④の解像度で撮影しましょう!」という話ができます。
 また、目的として、人がいるかどうかがわかれば良い、のであれば、③でも十分かと思います。

 解像度は目的に対して不十分であってはなりませんし、十分すぎると作業効率が著しく低下します。ちょうどいい解像度で撮影しなければならない、ということが非常に重要なポイントです。
 必要解像度が決まっていれば、あとはカメラやレンズを選定し、必要な撮影距離で撮影すれば、その解像度を再現することができます。「本当に??」と思う方は、下の計算を元に実験してみてください。本当にそうなります。

解像度は取り戻せない

 デジタル写真は、撮影後の加工で解像度を取り戻すことはできません。

 上の図は、Photoshopで、3×3ピクセルの画像を、9×9ピクセルに高解像度化したものです。鮮明になっているように見えますが、実際にはピクセルが増えた分、色のギャップをグラデーションで埋めているだけで、元々の解像度が上がったわけではありません。

 ハイエンドな機械学習やAIを使ったとしても、本質的に解像度を高めることはできません。よって、現場でシャッターを切るまでにしっかり解像度管理を行っておくことが非常に重要なのです。

解像度は、分解能で管理する

 解像度は、画像データの点(素子またはピクセル)の密度のことを言います。印刷やTVモニターやプロジェクターのスペックとして使われることが多いです。単位はdpi (dot per inch)やppi(pixel per inch、dpiと意味は同じ)で、1インチ(2.54cm)の中に何粒並んでいるかの密度を示しています。(inchを採用しているのは習慣的な理由で、ppm (pixel per meter)も稀ですが存在します)

 インチは馴染みがありませんし、実際に「解像度100dpiでよろしくね」といったオーダーはきません。解像度(dpi、ppi)で実際に管理すると、撮影時に計算が面倒という問題があります。

 よって現場では、解像度ではなく「分解能(ぶんかいのう)」を使います。分解能は、解像度の逆数です。とりあえず分解能の話にしてしまうのは「その方が分かりやすいから」という理解で大丈夫です。

 分解能のことを、写真測量では「地上画素寸法」ともいいますし、分野によっては「空間分解能」や「画像分解能」という言い方をします。全て「分解能」として考え方も言っていることも同じです。

 分解能は、画像データの1点が写している範囲(基本は正方形)の1辺の長さ、のことです。mmかcmを使い、単位は cm/px、mm/px、となります。

 実際のクライアントからのオーダーは「分解能 1cm/pxでよろしくね」といった形になります。 以下のように、解像度6dpiは、分解能4.23mm/pxと同じです。

 ここまで理解しても、解像度と分解能。ややこしいですよね。。実際、分解能の話をするとき常にややこしいです。実は、英語では、解像度も分解能も”resolution”で、言葉として区別されていません。また、「分解能」という言葉は、まだまだ浸透していないので、私は分解能という言葉と意味を共有している相手以外には、分解能のことを言う時も「解像度」と言うことにしています。

分解能の計算方法

 分解能の計算式は決まっており、可視光カメラ、赤外線カメラ、などおおよそカメラと呼ばれる装置であれば、共通です。公共測量マニュアルにも同じ式が記載されています。

[分解能の式] *単位に注意してください

 難しいですよね。。実際現場で使う場合は、「撮影距離」以外の数値は、カメラとレンズのスペックなので、現場でこの計算をする必要はありません。カメラとレンズのスペック部分を「iFov」といい、カメラとレンズごとに決まるiFovをメモしておけば、複雑な計算は不要です。

 また、iFovの単位はmrad(ミリラジアン)と言いますが、このラジアンというのは特に気にしなくても大丈夫です。iFovは比率であって単位はありません。便宜上rad(ラジアン)と表しているだけです。また、mradのmはミリのことで、radを1000倍していることを意味します(iFovは0.000・・という小さな数字なので)。また最後の式では、mradにしているので、撮影距離がm(メートル)に変わっていることにご注意ください。

[iFovの式] *単位に注意してください

 例えば、Phantom 4 Proで分解能1cm/pxで撮影するための撮影距離はいくつでしょうか。(Phantom 4 Proは、センササイズ 13.2 x 8.8mm、静止画画素数 5,472 x 3648px、レンズ焦点距離が8.8mm)

 まずスペックから、iFovを算出します。

 現在不明なのは、撮影距離なので、分解能(10mm/px)をiFovで割ります。

撮影距離[m] = 分解能10[mm/px] / iFov0.274[mrad] = 36.4[m]

*少数第二位切り捨て

 となります。 よって、Phantom 4 Proで、分解能1cm/pxは、36.4mの撮影距離で実現可能と言うわけです。単位が少しややこしいので注意が必要ですが、慣れたら簡単です。

より速い計算

 より早く計算したり、頭の中でどのカメラが最適か、どれぐらいの撮影距離になるか算出するには、iFovを暗記するより、1cm/pxや1mm/pxの時の撮影距離を暗記しておく方がおすすめです。

 代表的な撮影距離を知っていると「分解能と撮影距離は比例する」という仕組みを活かすことができます。

 例えば、分解能1cm/pxのとき撮影距離36.5mとわかっている場合、2cm/pxにするなら、撮影距離は2倍の撮影距離73m、0.5cm/pxにするなら、半分の撮影距離18.25mとなります。iFovから算出する場合は電卓が必要ですが、これであれば暗算でできます。

今時自動飛行アプリで計算してくれるからそんな計算は不要では?

 自動飛行アプリでそのような計算を行ってくれるものは多いですが、分解能を計算するために、いちいちアプリや専用ソフトを起動して、飛行計画を入力して、数値を調整しながら指定の分解能を探していくなんて、ナンセンスだと私は思います。解像度管理を習得すれば、飛行計画は手打ちでできますし、どんな自動飛行アプリでも対応できます。

 また、解像度の感覚を養うためにも、式を知っておくことは絶対に役立ちます。多くの人は、とても複雑な計算をしているから、、と先入観を持っているだけで、実際はとてもシンプルな理論です。

 慣れれば、クライアントから相談があったその電話で、機材と飛行方法の相談ができますし、条件が変わればこうなります、と修正も早いです。

解像度管理は、「分解能」と「撮影距離」と「カメラスペック」の調整

 上の式を見ると「分解能」は、「iFov」と「撮影距離」によって決まると理解できます。もし必要分解能を確保するために、撮影距離が短すぎるのであれば、iFovの小さいカメラ、レンズを使用すれば良いです。このように「分解能を規定し、実現するための機材、撮影距離を調整する。」これが解像度管理です。

 iFovについては、自分がもっているカメラとレンズの組み合わせであらかじめ算出しておき、エクセルなどにまとめておくと便利です。

「どうやって解像度管理を行ったか」がメッチャ大事

 計測系の業務では「何をもって解像度を証明するか」というプロセス部分の報告が必須です。目的は、画像データを利用して何かしらの検査結果を生み出すことなので、検査結果の裏付け、証拠となるデータしか有効ではありません。

 以下は解像度管理において報告が必須の項目です。

  • カメラとレンズのスペック
  • 撮影距離(理想値)
  • 撮影距離の計測・維持方法

 特に「撮影距離の計測・維持方法」が問題になります。理論上、36.4mの撮影距離、といっても、ドローンはミリ単位で静止することはできませんし、計測時ドローンは空中にいるので、対象物との距離をミリ単位で管理することはそもそも難しいという実情があります(レーザー距離計を搭載したドローンは距離計の値が使えます)。だからこそ、どのように距離を計測し、維持したのかという手法を計画書や報告書で明確にすることがメッチャ大事です。

 こうした「手法の説明」を丁寧に行う業者は、計測系の発注者にとても喜ばれます。最強のサービスとなりますので、ぜひノウハウを作ってもらえればと思います。

次回

 私の番が回ってきたら、解像度管理技術から派生する作業量の効率的な見積もり方や、作業量を調整するために解像度規定を変更する方法などについて解説したいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

ご質問・ご相談等ありましたらSkyLink Japanにお問い合わせください。

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